日本人とkey

同志社大学客員教授の田村裕一郎氏の著作に「かぎの話と窃盗リスク」(2010年発行)という書籍があります。

プロローグで彼は述べています。

「少し前までは、日本人にとってかぎは決して日常的な用具ではなかった。かぎを使うという発想そのものになじみがなかった」。

更に、本文の中で諸外国との比較で、日本の哲学者でもあり日本思想史家である和辻哲郎氏著の「風土」から

「錠前と鍵の発達の程度はヨーロッパと日本において恐ろしく異な」り、日本のかんぬきや土蔵のかぎは「ほとんど原始的といってよい」

と記されていることを提示しています。

明治から昭和初期にかけて活躍された経済学者、長野敏一氏の「発想転換の経済学」にも

「欧米の生活はカギが多い。多いだけでなく、そのカギは精妙であり,頑丈である。その上、カギのかかるのは家の外回りだけでなく、内回りも、である。部屋々々にカギが有り、更に調度や容器類まで鍵をかける。家中鍵・かぎ・カギの生活である」。

和辻哲郎氏と長野敏一氏は、日本人の考え方と欧米人とではカギに関する考え方が異次元であると感じていたのではないでしょうか。

日本人にとって“かぎ”は単に付いていれば良い、“かかって”いれば良いという意識の程度で良かったのです。

それほど日本は“安全な国だった”のです。

 古来より日本では殿様や大商人でもなければ、他人が自宅へ侵入して金品を盗んでゆくような、犯罪リスクがとても小さく、対応にコストをかけても無駄になる確率が多かったのです。

その結果、ほとんどの日本人の意識の中にkeyという道具が根付かなかったのでしょう。

 使わなかったから、いまさら道具の正しい使い方や効率的な使い方を考えましょうと言われても、今の日本人の意識には難しいのかもしれません。

しかし、現代社会ではインターネットにログインするのにパスワードというkeyを使いはじめました。

銀行やその他個人情報、いろいろなところでこの“パスワード”というkeyを使わなければ、自分の財産を守れないことを学び始めています。

個人的に2年ほど前に鍵のシステムとしての構造化を調べたくて、マスターキーシステムに関する資料を検索した。
しかしながら日本語では鍵メーカーが出している、製品パンフレットなどしかありませんでした。


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